読書

#読了「女帝 小池百合子」日本の病理とは? その3

連載の3作め。1作めはこちらからどうぞ。

☆擁護するわけではないけれど…

私は本書を読み、そこに日本の病理を見ました。

確かに、嘘をついて人を騙して、公権力を行使する地位を手に入れた小池氏は断罪されて然るべきです。

しかし、この問題を「小池氏の人間性」として捉えることは、事の本質を見誤り、矮小化してしまう虞があります。

見方を変えれば小池氏は、マスコミや世間のニーズに応えてきたに過ぎません。

卒業してもいないのに「カイロ大学首席卒業」を謳い、そんなにハイレベルでもないアラビア語で要人の通訳をしてしまうことは、道義的には問題はありますが、私はそこまで非難する気はありません。若くて美人な才女をニュースにしたいのであれば、まあそれはそれで、と受け流すことはできます。テレビキャスターに関しても同様です。

小池氏は、「政界の渡り鳥」「権力と寝る女」と揶揄されることがあります。

確かに客観的に見て、細川護熙氏、小沢一郎氏、小泉純一郎氏、と次々に仕える人を変えていきます。いずれも時の権力者です。しかも、さんざんお世話になっておいて、仕える人を変えるやいなや、元々仕えていた人を公然と批判するのです。人としてどうなのか、という誹りは免れ得ないでしょう。

しかし、小池氏をそこまで駆り立てるものは何か、ということを考えずに小池氏だけを非難するのは一方的な見方だと私は思います。

今でも日本はジェンダーギャップ指数が121位という惨憺たる状況です。

昭和末期や平成時代はもっと酷かったです。

そんな状況下にあって、女性が成功するには、媚でも何でも売って、利用できるものはすべて利用せざるを得なかった、ということはあると思います。

小池氏は、政策や主張の中身はスカスカで、ファッションやキャッチコピーなどのテレビ受けするイメージのみを追い求めました。

しかし、そんな小池氏をマスコミは喜んで取り上げたのであり、

小池氏を選挙で勝たせたのは他でもない国民自身です。

最近になって、本書の著者である石井妙子氏、アラビア語を勉強されている黒木亮氏など、

小池氏の学歴詐称問題を検証する記事が出てくるようになりましたが、

マスコミは長らく、小池氏の学歴を深く追及・検証することはまったくせず、

アイドル的に持ち上げてきました。

誤解を恐れずに言えば、悪いのは小池氏(だけ)でなく、私たちのほうではないのか。

私たちがもっと賢くなって、正しい選択ができるようにならないといけないのではないでしょうか。

いつの頃からか、「小泉劇場」「小沢劇場」などの語を恥ずかしげもなくマスコミが使い始めるようになりました。

国民は政策の中身ではなく、エンタメ性やビジュアルなどの刺激ばかりを政治に求めるようになりました。

今でもそれは全く変わっていないようです。

話の中身がスカスカの小泉進次郎氏を喜んでマスコミは取り上げます。

大阪の吉村知事と愛知の大村知事なら、コロナ感染症の拡大防止に成功しているのは明らかに後者であるにも関わらず、マスコミは挙って前者ばかりを持ち上げています。

話が逸れたので戻します。

本書は、小池氏を通して、日本の病理が克明に描かれていると私は思います。

つまり、小池氏の生い立ちから、虚言に塗り固められた「実像」を、多くの関係者の証言に基づいて詳細に明らかにすることにより、むしろそのような人物を「首都東京の知事で、総理大臣をも狙う政治家」にしてしまった、「日本社会の歪み」のほうこそが鮮やかに描かれているのです。

本書を執筆した石井妙子さん、石井さんに情報提供した早川玲子さん(仮名)他多数の方々、本書を出版した文藝春秋に心からの敬意を表したいと思います。

(続きます…)