主義・主張

出生前診断は是か非か?

連載物です。最初の記事はこちら

☆「優生学」は集団レベルから個人レベルへ?

第2次大戦も終結し、1948年に国連により「世界人権宣言」が採択されると、当然ですが優生学は遍く批判の対象となっていきます。表向きは、公には優生学は否定され、教科書や雑誌には掲載がなくなります。

しかし、2000年代に入りヒトゲノム(ヒトの遺伝情報)が解明され、遺伝子工学が発達するにつれて、再び優生学的なヒト遺伝子の選抜が論じられるようになりました。新たな優生学が誕生しつつあると言えます。

従前は、ユダヤ人や黒人、障害者、精神病者などのくくりで国家の政策として行われてきた優生政策が、今日では、商業化された遺伝子診断の利用という、個人のレベルで現実に問題になってきています。

☆出生前診断は是か非か?

例えば、出生前に胎児の遺伝子や染色体の変異を検出する「出生前診断」というものがあります。遺伝子または染色体障害の赤ちゃんを持つリスクが高いカップルに提供されています。

出生前診断は、妊娠を中止するかどうかの判断などに役立つ情報ではあります。

しかし、その実際はどうでしょうか。

日本看護協会の公式ページには、出生前診断を受けた夫婦のケーススタディが載っています。以下、要約して記載していきます。

42歳、妊娠18週、過去に流産経験のある女性が、夫の両親に強く勧められ、また前回の流産の際に遺伝的な原因の可能性を指摘されたこともあり、心配で胎児の出生前診断を受けることにしました。

医師から、検査結果で染色体の異常がみられること、産まれてくる子どもの染色体異常の確率について、そして、中絶可能な週数は妊娠22週までである、ということについて説明がなされました。

医師との面談後、助産師に呼ばれカウンセリングルームに入るなり、「どうしていいかわからない」と泣き出してしまったそうです。

中絶可能な週数が近づく中で、短い期間で非常に重い決断が迫られている現実がよくわかります。今の日本で障害を抱えた子どもを育てていくことに大きな不安を覚えるのも無理はなく、しかも本人だけでなく夫や家族の気持ちなども交錯することでしょう。

また、どんな診断も100%正しいわけではありません。上記とは別の事例で、検査の結果「異常なし」であったにもかかわらず赤ちゃんが障害を持って生まれてきた場合の、両親の受け入れがたい現実も問題になっており、訴訟に発展した事例もあります。

では、出生前診断なんかやらなければよいのかというと話はそう単純なものではなく、「診断を受けないという判断は正しかったのか」と繰り返し不安になってしまったり、「検査できるのになぜ受けないのか」と周囲から非難されたりといったことが問題になっています。

受けても受けなくても気が重くなる、出生前診断。なかなか罪な技術ではないでしょうか。

果たして、出生前に「赤ちゃんが障害を持って生まれてくる」と相応の確度で予測できることは良いことなのかどうか。障害がある可能性が高いから中絶しましょう、という判断と行動は赤ちゃん自身にとってどうなのか。いろいろ考えるべき複雑な問題がここにはあります。

(つづく…)

私のような初心者に超おススメ!オンライン英会話無料体験はこちら