続きです。前篇はこちら。
☆見事な構成
この小説は、大学4年生現在、巨大組織となったモアイと闘うパートがメインで進行していきますが、冒頭や要所要所で回想シーンとして、かつてのモアイや田端と秋好との交流が挟まっています。
この構成が、物語上実に効果的に展開していきます。
主人公は田端なので、基本的には田端の目線や思考で本文は描かれています。
しかし、間に挟まる回想シーン、そして登場人物のセリフなどでは、当然ですがその人物の目線で物事が語られます。
読み進めていくうちに察しの良い読者は、ちょっとした違和感というか、「おや?」と思いながら読んでいくことになるでしょう。
読み返してみると、伏線や態(ワザ)とミスリードを誘うような描写にも気づくことができて、また違う趣を味わうことができます。
☆変わるのはいけないことか?「成長」と「正義」
物語の後半、まさにクライマックスで、ついに田端はモアイの現リーダー、ヒロと直接対決をすることになります。
ここが最高に青くて痛くて脆い。
一方は変化を「世俗化・腐敗」と捉え、もう一方は変化を目的の実現に必要な「成長」だと考えている、と私は受け止めました。
私は、どちらかと言えば「ヒロ」のほうに共感を覚えましたが、皆さんはいかがだったでしょうか。
いずれにせよ、人はみな異なる正義感の尺度を持っていると思います。

田端とヒロは、国家間に擬えるならば「戦争」になってしまいました。
もっと早く対話をして相互理解を促進できていれば、あるいはもっと違った結末もあり得たのかもしれません。
誰も傷つけたくない、誰にも傷つけられたくないとただひたすらに願い、人に不用意に近づきすぎず、人の意見に反する意見はできるだけ口にしないということを生きる上でのテーマとして心がけてきた田端が、そのことでかえってテーマに反する結果となってしまう展開は、最高に皮肉が利いていますね。
これは現実も同じだと思います。個人間でも国家間でも、ときには意見を主張し合うような対話による相互理解が重要であると考えます。
(続きます…)
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